妊娠優先で事務の派遣

派遣で働きだしたのは、前職が長く働ける職場ではなかったからです。今でこそマタハラなどという言葉がありますが、この頃は妊婦に対してあまり理解がないのが普通の風潮でした。その前職の会社も「妊婦は邪魔」と公言するような会社だったので、そろそろ妊娠したいと考え出した20代後半でやめることになりました。

次の職を探すにも第一目標は妊娠・出産だったので、妊娠・出産しても迷惑が掛からず嫌な顔をされない職場を選ぶ必要がありました。普通に正社員で勤務した場合、採用していただけてすぐ妊娠では申し訳なさすぎます。かといってだから妊娠計画を1年2年遅くするのも嫌でした。そこで考えた末、派遣なら機関も決まっているし正社員に比べたらはるかに迷惑が掛からないだろうと思い派遣で探すことにしました。

20代後半で子どももいなかったので、派遣先はすぐに決まりました。パンフレットを作って顧客に送付し販売する仕事をしている小さな会社でした。従業員は10人。その中で正社員のかたが8人、定年後にアルバイトとして残っているおじいさんが1人、そして派遣の私でした。

主な業務内容はパンフレットを作る事。パンフレットをワードで作るのですが、そのためにネットで資料収集をします。そして上司である正社員の方にチェックを受け、OKが出ればひたすらワードに打ち込みます。

あとは会社の応接間の掃除やゴミ捨て、お茶くみ、パンフレット在庫の整頓、新聞の折り込みチラシのようにお客様にDMとしてパンフレットを送る際に何通かのパンフレットをまとめて封入、糊付け、ラベル貼り、郵便局への手配などが仕事としてありました。

小さな会社で平均年齢も高く、半分以上が45歳以上の会社でした。しかも男性のほうが多くみなさんパソコンが大の苦手。キーボードは人差し指で打ち、表が作れないのではさみとノリで切り貼りしているような会社した。

私は商品知識やお客様の相手では役に立ちませんが、実はパソコンもワープロから覚えていたのでワードもエクセルも全くの初めてでした。最初の頃は唯一の30代女性にやり方を聞くこともありましたが、この人もパソコンがそこまでできません。なのでこれだけはと一生懸命独学でワードを勉強しました。

少しずつ出来るようになってきて、気が付くと会社の中で一番パソコンが得意になっていました。社員の皆さんはご自分たちよりかなり若い女性の私だから逆にプライドが邪魔せず良かったみたいで、「やりかたを教えて」とパソコンで頼りになる存在として扱っていただけました。娘のような年の差だったのが逆に良かったのかもしれません。

パソコンが出来るようになってからは私一人に任せていただける仕事量も増えてきて、「社員にならないか」とまで言っていただけました。しかし私は妊娠・出産が第一目標なので丁重にお断りしました。正社員の方々も「それなら仕方がない」と理解をしていただけ、その後も派遣の契約を更新し続けました。

2年後、妊娠が分かりました。つわりでフラフラになったり、食べつわりで休憩時間以外もお腹が空いてしまって大変でした。しかしそれも社員の方々は理解してくださり、休憩時間以外もいつでも食べていいよと言ってくださっていました。元々職場でお菓子を食べることがタブーとされていなかったので私も遠慮せずお菓子などをちょこちょこ食べさせてもらっていました。お子さんがいる男性社員がほとんどだったので妊婦の私にやさしく気遣ってくださいました。

妊娠7か月で契約終了となる日まで、最後まで円満に仕事をすることが出来ました。私が皆さんとうまくやれたのはもちろん職場の皆様がとても良い方々だったのが一番ですが、みなさんが嫌うお茶くみや掃除を率先してやったことと、みんなが苦手だったパソコンを勉強したからだと思います。